仕事を成功へ導く案内書

失敗学のすすめ (講談社文庫)

失敗学のすすめ (講談社文庫)

この本には、失敗の定義を行い、失敗を分類してよい失敗と悪い失敗を明確にし、失敗情報の伝わり方を分析し、致命的な失敗を避け、よい失敗を創造的な活動に結びつけて仕事を成功させるにはどのようにすればよいかが豊富な実例をもとに記述されている。
その中で、特に重要な後半部分にある「致命的な失敗」が起こる要因として、「局所最適と全体最悪」がある。
この「局所最適と全体最悪」は、全体像を理解しないで一部の専門知識しか有しない「偽ベテラン」によって引き起こされると述べられていた。
これは成熟期にある組織ではよく見られる現象で、この文を読んでいる方にも自分の会社などで思い当たる人が一人や二人はいるのではないだろうか?
ともかく、何事も失敗はつきものなので、失敗を恐れず行動し、失敗したらその情報をどんどんみんなに公開する行動をとっていくのが良い。
それを可能にするためには、他人の失敗を責めず、みんなで協力してよいものを作り上げようという組織の風土作りが必要であろう。
上司であれば部下の小さな失敗を責めない心構えと、部下が致命的な失敗を犯す前にサポートできる準備が必要なのではなかろうか?


本書は、単に「失敗は成功のもと」の実例を上げた解説書ではなく、多くのよい失敗を経験することにより、創造的価値を生み出す人や組織を作るための指南書として非常に有益な本だと思う。